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杉並区、高円寺。夕方の商店街を抜けたところに、サンセット通りという小さな道があった。
その名前を知ったのは、君と初めて歩いた日のことだ。
古いレコード屋の前で、君は突然立ち止まった。店先のスピーカーから、懐かしいジャズが流れていた。
「この曲、知ってる?」
僕は首を振った。
「じゃあ、いつか好きになるよ」
君はそう言って笑った。夕陽が君の髪に触れ、通りの向こうでは自転車のベルが鳴っていた。
それから何年かが過ぎた。
2011年の秋、僕は久しぶりにその通りを訪れた。レコード屋はなくなり、代わりに小さな花屋ができていた。店先には黄色い花が並んでいる。
ふと、あの日の曲が聞こえた気がした。
振り返ると、通りの向こうから君が歩いてきた。
「まだ、この街にいたのね」
僕は少し驚いて、それから笑った。
「うん。ずっとここにいたよ」
君は花屋の前で立ち止まり、黄色い花を一輪買った。
夕陽は建物の隙間に沈みかけていた。僕らは何も言わず、サンセット通りを歩き始めた。
あの日と同じ風が吹いていた。東京の街は変わっていく。それでも、夕暮れのどこかに、まだ僕らの時間が残っている。
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